防波堤

昧爽どきを通り抜けてたら

生活

早2ヶ月、在宅で仕事をしている。

毎日通勤をしていたときのことが嘘みたいだ。会社の迅速な対応には心底感謝している。3月1日には会社用のiMacを家に運ぶ許可が降りて、在宅ワークを始めることになった。最初は試行錯誤の連続だったし、家にいても仕事のことを考えてしまって落ち着かなかったけれど、今ではすっかりこの生活にも慣れてしまっている。

毎朝10時の始業ギリギリに起きて、作業開始の報告を布団の中で打つ。かろうじてメールやSlackだけはチェックしながら、お湯を沸かし、顔を洗って、服を着替えて......結局いつも仕事をし始めるのは11時くらい。良くないこととは理解しつつも、一応裁量労働制だしな......と言い訳しながらついついのんびりやってしまう。在宅でもなんら支障のない職業だと思っていたが、業務量はコロナ禍でずいぶん減った。おかげと言っては難だけれど、昼休憩もきっちり1時間取れるし、定時には作業終了のメッセージを打っている。こんなんじゃ体内時計が狂うかもと思っていたけれど、意外と8時間の睡眠は確保出来ているし休日でも午前中には起きている。

この街には住んで5年になるけれど、最近ようやく昼間の景色を知った気がする。向かいの家の視線が気になってあまり開けることがなかったカーテンを、思い切って全開にしている。寝ぼけ眼に差し込む光が痛いくらい。

数日に一回、住宅街を歩いて人の少なそうなスーパーにいく。エコバックいっぱいに食品類を買って、ついでに馴染みの店のテイクアウトを買ったりもする。家のそばには緑道があって、近隣の人が世話をしている花壇がある。パンジーやチューリップ、今の季節ならではの花々が咲き乱れている。おそらく季節ごとに植え替えているだろうその花壇のことを、この春ようやく認識した。ベランダに置きっぱなしにしていた多肉植物の世話をしたり、豆苗を育ててみたりもしている。

毎日の食事はUber eatsに頼るときもあるけれど。野菜不足ならない程度に作って食べて片付けて。最近晩酌のためにグリーンラベルの24本入りケースを買ってしまったことは少しだけ反省している。さすがに1日2本までの制約を自分にかけているが、それでも多く飲んでしまった次の日は禁酒する。

書いてみると、今までよりもよっぽどまともな生活なような気もしてきた。大学を卒業して社会人になってから、一番人間らしい生活を送っているかもしれない。そこまで苦にせずやってきたけど、この生活に慣れてしまうと今より3時間は早く起きて日付が変わる頃に家に帰ってくるような日々がいつか戻ってくると思うと少し怖いな。

ずっとこの生活がいいかというとやっぱりそうは思えないけれど。得たものも多いけど失われたものはもっと多い。恋人とのんびり過ごしたいし(もう3週間も会えていない)、たわいもない話をしながら美味しいごはんを食べたい。本屋をあてもなくぐるぐる回りたいし、天気の良い休日はレジャーシートをもって公園にでも出掛けたい。週末の仕事終わりには顔馴染みの常連ばっかりが座るカウンターで、朝日を見るまで飲みたい。

お腹の底が重たい。日常だったことが簡単に出来ないこととなってしまった状況では、あらゆることが実現に移せない夢のままでとてももどかしい。ニュース番組やTwitterの情報を観ながら、怒りや悲しみを感じつつ。雨が降った日には理由なく落ち込んでしまう。そうでなくてもふと悲しくなって、そういうときはさっさとお布団に入って不安を抱え込むように眠る。

ただこの未曾有の事態の収拾がいつになるのか、専門家の人ですら断言出来ない今の状況で、自分が考えたってもちろんわかるはずもなく。

正直Twitterの140字以内の記録すら毎日続かないくらい文章を書かないし、飽き性なのでこの先何度更新するかもわからないけれど。それでもせめて今こんなことがあった、という記録を書き留めておこうと思い、唐突に行動へ移してみた。今の寂しさがいつかなにかの糧になりますようにという祈りを込めて、このブログ最初の投稿にしようと思う。